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「麻の葉」第45号

2022/05/31 (Tue) 20:00
麻布教育研究所長通信「麻の葉」第45号

小学校の改革に携わっていて、あらためて感じるのは低学年それも1年生の
大切さです。いま、日本の教育の大きな目標が「主体的・対話的で深い学び」
であり、各学校さんも、「自律的な学習者」や「学びに向かう力」を育てよう
としているときに、それとちょうど正反対の指導が1年生の教室でなされて
いることをよく目にします。
一方、私は全国の小学校で、この人はと思う「1年生のスペシャリスト」にも
多く出会ってきました。そうした先生の教室では、わずか6歳の子どもが、
ニコニコ、ワクワクしながら、学習に夢中になっています。

この違いは何だろうか、どこから生じるのだろうかというのが、長い間の
私の疑問でした。いまもそれに答えは出ていないのですが、もしかしたら
こういうこともあるのかなあという点に気づきました。

1学年担任が、何に責任を負って(責任があると思って)指導しているかと
いう視点です。じつは1年生の先生って、とても責任感とか使命感のある人が
多いです。しかし、聞いてみるとその中身の多くは、「学校に適応させる」
ことにあるようです。「きちんと座る」「先生が指示するまで動かない」
「誰か(主に先生ですが)がお話ししているときは、だまっている」等々が
あります。なので、この適応というのは、おおよそ小中の9年間、または
長く見積もっても高校までの12年間ほどが見通されているにすぎないと
気づくでしょう。

それも仕方ない部分もあります。上記のことができていないと、上の学年の
先生から「1年生で何を教わってきたのかしら」と嫌みを言われてしまうの
ですから、強大なプレッシャーです。そうやって、1年生のベテランは
子どもを思い通りに動かす技を身に付け、若い先生にもそれを身に付ける
よう申し渡します。

待って、黙って、動かないとは、主体的でも対話的でもなく、深い学びを
放棄しているようなものですが、どうやらそれとこれとは別であるようです。
子どもたちは、先生の指示通りに主体的・対話的に深く学ばなければならない
という話しになっています。

では、もう一つのタイプの「1年生のスペシャリスト」は、何に責任を
負っているでしょうか。私は、どなたにも直接尋ねたことはないのです
けれど、もしかしたら、その子の80年の人生に責任を負っているのでは
ないかと思うようになりました。
4月に入学してきた子どもたちは、「学校でお勉強ができる!」って、
すごくうれしいのです。見ること、聞くこと、やること、ぜんぶ面白くて、
いろんなことができるようになる自分を発見することが無上の喜びです。
私がこのメルマガで何度か言及した「好奇心」というエンジンを、思いの
かぎり動かす機会が保障され、出会いと対話を繰り返す学びを1年生のうちに
経験できると、それが一生学び続ける基盤になります。80年の視野とは、
そういうことです。

やりたい、知りたい、挑戦したいという様々な「○○たい」を満足させた
結果としての楽しみが、低学年の子どもたちが本来感じるべき楽しさです。
その点、多くの大人たちは勘違いしていると思います。幼い子どもだから
遊ばせてあげるのが、子どもの楽しみになると思い込んでいます。でも、
私が見るかぎり、子どもは子どもだましにはだまされません。
けっきょく、「幼いから遊ばせてあげる」は、「もう中学生だから甘やかし
ません」と表裏の関係にあります。どちらも子どもを馬鹿にしている話です。
何を喜び、何を学び、何を追究するか、どのように成長したいかについて選ぶ
権利は、子ども自身の手にあるべき事柄です。

小学校1年生がニコニコしている学校とは、「生涯にわたる学び手」が
育てられているということですから、「主体的・対話的で深い学び」の
改革がうまくいうようになるのも、とうぜんのことになります。

村瀬公胤
一般社団法人麻布教育研究所 所長
murase@azabu-edu.net