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「麻の葉」第42号

2021/11/30 (Tue) 23:15
麻布教育研究所長通信「麻の葉」第42号

全国の学校を廻っている私が、よく尋ねられる質問として、
「地方によって学校も違いますか」とか「他県と違うところはありますか」
というものがあります。
たいていは、給食のメニューとか牛乳パックのたたみ方とか、他愛もない
話で終わるようなものですが、けっこう重要な課題が隠れていることがある
かもしれません。
なにより教員のみなさんは、自分の県にあることが、全国で共通にあると
思っているので、知ってみると意外なことはたくさんあるのではないで
しょうか。

小学校でも中学校でも、毎時間、何か「礼」をしていますね。小学校1年生
でも(いや、1年生だからか)「きょーつけー、3時間目のおべんきょうを
はじめます」などとありますが、これからして、日本以外の国で見ることは
まずありません。終わりの挨拶と合わせれば、毎日10回以上していますが、
あまりにも当たり前すぎて、誰も不思議に思いません。
「他の国では、ない風景ですね」というと、みなさん驚きますが、
「でも、みなさんも大学では始まりの礼をしたことなかったですよね」と
聞くと、「あ。」みたいな顔をします。

さて、この挨拶にはけっこうバリエーションがありまして、「気をつけ」
「起立」「正座(沖縄の言葉で「気をつけ」に相当)」「立腰(りつよう)」
「黙想」等々だけでなく、「総員27名、欠席者2名、現在数25名、5校時の
学習を始めます。」というのまであります。

授業が始まると… 中学校でときに見かけるのが、
「登下校は制服、でも登校したらジャージに着替えて一日中(体育以外の
科目で教室でも)ジャージで過ごす」というパターンの県があります。
小学校では、机の上で「えんぴつ・消しゴム・赤青えんぴつだけ」が
「長方形のプラスチック片」に輪ゴムでくくられている県もあります。
学習中に、先生が赤ペンを持って教室を回ることは、多くの地域で見かけ
なくなりましたが、いまでも根強く残っている県もあります。と言ったら、
「え、他県ではないのですか」と驚かれました。
また、「理科ノート」というものが存在する県があります。教科書に載って
いる実験の図とか表とかがぜんぶ網羅されて印刷されており、理科室では
その実験をやってそこの表に結果を書き込めばよいというシステムになって
います。

これらの風習や制度は、かつては何らかの意図があって始められたので
あろうと思いますが、いまとなっては「やめる」とも「続ける」とも誰も
言わないままに、毎年同じことをしているような状況でしょうか。

GIGAスクールのタブレットでも、いよいよ様々な風習が生まれつつあり
ます。つくづく、学校というのは風習好きな組織文化なのだなと思います。
そして、いちど生まれた風習は、かなり根強く残るものです。

風習がいいとかわるいとかいうわけではありませんが、ただ、考えること
なく風習のままに実践を継続することは、「主体的・対話的で深い学び」の
時代にふさわしいと言えるでしょうか、という問題です。

ある学校のある校長が、授業開始の挨拶として、「立腰」+「黙想」+
「黙想やめ、礼」を導入しました。そののち、その学校の先生が私に
「これって、続けてもよいものでしょうか」と尋ねられました。私は、
「立腰をなぜするのかについて、生徒が答えられる限りにおいては、
続けてもよいかもしれませんね」と答えてみました。すると、その学校
では、年度初めに代々の生徒会長が新入生に「なぜ立腰するのか」を
語るようになりました。

またある小学校の校長先生からのご質問は、「校区の中学校さんが、
朝のあいさつ運動をしようと言ってきている。自分としては迷っている
のだが… 」というもので、私は「だれかれかまわず大声でどなり散らす挨拶
ならおやめなさい。ただ、登校する人に目と目を合わせて、その人に合わせた
『おはよう』が言えるのであれば、やってもいいかもしれません」とお答え
しました。

他愛もなさそうな行為、一般的に考えれば善行であろうと思われる行為でも、
風習になったときからそれは、体に染み付くという意味で、授業=学習の内容
以上に、強烈な(非・反)教育的メッセージを子どもたちに発しているのでは
ないか、私はそんなことを考えながら、学校の風習の観察者、文化人類学者を
やっているときがあります。

村瀬公胤
一般社団法人麻布教育研究所 所長
murase@azabu-edu.net