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「麻の葉」第38号

2021/03/31 (Wed) 20:00
麻布教育研究所長通信「麻の葉」第38号

先日、沖縄本島北部のある地域に招待され、保護者や地域住民を対象にした
講演会の講師を務めてまいりました。発達障害や特別支援教育が中心テーマで、
いわゆる非定型発達の子どもたちを、どのように見守り育てるかという話です。

この企画は、ある保護者さんのサークルが中心になってスタートしました。
ご自身のお子さんたちの発達の特性が教室文化、学校文化になじめないために
苦労されたり、悩んでおられる方たちです。
この企画主旨はすぐに周りの保護者さんたちの賛同を得て、あっという間に
校区を超えて拡散しました。当日は、企画者さんたちもびっくりするような
人数の保護者、市民、教員の方々が集まりました。

学校というのは、ただでさえ「変わりたくない」組織の代表のようなところ
です。たいへん悲しいことですが、その学校文化になじめない非定型ちゃん
たちの存在は、学校の「変わりたくない」意識を刺激します。保護者さんの
ほうからすれば、ささやかな要望に過ぎないことでも、学校には過剰な要求に
思われたりすることがあるようです。そこで、なんとかして非定型ちゃんには
別立ての教育環境を提供することで、学校本体は変わらずに済ませたいという
隠れた意識が顕在化してきます。学校は組織ですから、それ以上の感情はない
でしょうけれども、別立てを提案された個々の保護者さんにとっては、とてつ
もない壁を感じるでしょう。この受けとめ方の感情的ギャップが、さらに問題
をこじらせていきます。

今回の講演では、企画者さんと相談して、質疑の時間を長めにとりました。
ご質問、ご意見、そして苦悩の訴えまで、多くの声を聴かせていただきました。
私がいちばん勉強になったのだと思います。

とくに印象的だったのは、保護者さんの考え方です。学校にいては見えな
かった(聞こえなかった)であろうことなのですが、保護者さんたちが
「うちの子」だけのことを考えているというのは、大きな誤解なのでは
と思います。ご質問にお立ちになった保護者さんたちは、自分の子の幸せ
だけを願っているのではなく、自分の子を通して見えてきた学校の課題を
気にしてくれているのです。他にも同じような悲しい思いをしている子が
いないだろうか、先生は板挟みになって悩んでいないだろうか、どうしたら
みんなが幸せになれる学校を作れるだろうか、そのことを考えて、学校に
質問したり提案してきた保護者さんたちが、とても多いのです。

モンスターペアレントなる醜怪な造語が出現してから、だいぶ時間がたち
ました。いろいろなケースがあるのでしょうけれども、私たちは、対立し
なくてもよい対立をしていることがあるかもしれません。
「変わりたくない」意識が、守りに入ったとき、しなくてもよかったはずの
対峙がそこに生まれます。

私のメルマガで最も多く出てくる問題意識が、「ふつう」「あたりまえ」を
問い直すお話しです。自分の生育歴のどこで身に付けたのかわからないの
ですが、「ふつう」や「あたりまえ」が持っている暴力性がひどく気になる
のです。そして、近代社会制度の要塞とも言うべき「学校」は、「ふつう」や
「あたりまえ」が暴れ回っているところです。
ペアレントよりも、スクールのほうがモンスターになっていないか、今後、
学校の管理職が気にするべきことはそちらのほうかもしれません。

その意味で、今回の講演で、保護者さんも、保護者ではない市民の方も、
そして教員の方々も一堂に会したことは、貴重なことだったと思います。

村瀬公胤
一般社団法人麻布教育研究所 所長
murase@azabu-edu.net