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「麻の葉」第28号

2019/09/30 (Mon) 23:15
麻布教育研究所通信「麻の葉」第28号

この通信は、ミャンマー出張中に書かれることが多く、今回もまた
出張中です。年間40日滞在しているので、確率的にもありそうな
ことなのかもしれません。今回の出張では、週末にU Thant House
を訪れました。3回目です。ミャンマー出身で1961~1971年に第3代
国連事務総長を務めたウ・タントの家が、記念館としてリニューアル
展示されています。ヤンゴン市内にありながら、静謐な雰囲気が流れ、
氏のお人柄を偲ぶとともに、世界の平和を想うにはよい場所です。

さて、前回に続いて、特別支援教育のお話しです。
日々学校を訪問していて、最近気になっていることがありました。
それは、特別支援教室で、子どもたちの机(座席配置)がバラバラに
なっていることです。たとえば1教室に3,4人の子どもたちとして、
教室の窓側から廊下側まで幅を広く使って、机と机の間は80cm~1m
くらい空けて配置されます。さらにその間に、ついたてが置かれること
もあります。

そうなる理由について、わかってはいるつもりです。発達の特性によっては、
知覚過敏など、音や光などの刺激を避けたほうがよいことはあるでしょう。
また、情緒面では、興奮したりパニックになったりしたときのクール・ダウン
の場所が必要だということもわかります。しかし、それはいつでも必要なの
でしょうか。また、他の方法はないのでしょうか。

私が知る限りでは、通常教室においても、聴覚過敏の子どもがイヤー・マフを
つけて授業に参加している例はいくつもあります。また、クール・ダウンに
ついても、通常教室にいる子が必要に応じて他の場所に行くことは、多くの
教員に認知されるようになりました。

なので、私が問題にしたいのは、「個別指導」が「バラバラ指導」と思い
こまれていないか、ということです。通常教室よりも個に対応しやすい
からこそ、かえってなにか必要以上に個別化してしまわないかという問題
です。個別指導とは、個別の特性に合わせるということではあっても、
個々に別々にするということではないはずです。

知的障害にも様々なケースがあると思いますが、知的活動の核心が思考
であり、思考が言語から成るのであれば、知的障害の子どもたちに豊かな
言語空間を提供することは、なによりも大切なことでしょう。それが、
机を離して座っていて、できるでしょうか。たとえ発達の違いがあっても、
いやあればこそ、お友だちと先生の対話に、聞くだけでも参加することが、
明日の発達を促すのではないでしょうか。教室の友だち(の会話)こそは、
豊かな学習環境、豊かな学習資源(rich resource)なのです。

情緒障害でも、同様なことがあるかもしれません。コミュニケーションの
スキルに課題があるならば、いっそうコミュニケーションに挑戦する場面
を増やす必要があるのではないでしょうか。もちろん、挑戦した結果、
トラブルが起きることもあるでしょう。そのときに個別に柔軟に対応できる
ことが特別支援教室の良さであって、トラブルを防止するために特別支援教室
があるわけではないと思うのです。rich resourceの最適化こそ、特別支援教室
の真骨頂と考えたいのです。

折しも、『学校運営』誌9月号で書いた、日本語指導が必要な児童生徒数の
最新データが公表され、5万人にのぼることがわかりました。この子たちも
また、rich resourceの最適化が必要です。取り出して日本語を指導するだけ
ではなく、教科学習の指導に日本語指導を組み込んで同時に学んでいく、
Japanese as a Second Language = JSLという考え方が注目されている
そうです。

また、通常学級も同様です。近年の授業改革で、アクティブ・ラーニングか
講義型かというのは、本質的な問題ではありません。そこでrich resourceが
提供されているかどうかが問題なのです。グループワークがたくさんあって、
ICTを使い、プレゼンも活発にするけど、poor resourceの授業なんて
いくつも見てきました。

教室、授業を見るときに、学習資源learning resourceという観点を
持ってみることをおすすめします。

村瀬公胤
一般社団法人麻布教育研究所 所長
murase@azabu-edu.net
『学校運営』誌については、こちらからhttp://kyotokai.jp/bulletin