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「麻の葉」第24号

2019/03/31 (Sun) 23:04
麻布教育研究所通信「麻の葉」第24号

この2,3月に、特別支援教育に関して、当事者である高校生の発表を
連続して聞く機会がありました。関西の高校1年生の男子、関東の高校
2年生の女子と、学校歴も成長の過程も異なる文脈の二人でしたが、
共通する何かを感じ、両名からとても強く心を揺さぶられました。

共通点を、どう表現してよいのか難しいのですが、
「戦わないことが闘いである」
ということだったのかもしれません。

どちらも、学校で辛い経験をしている生徒さんです。「ふつう」でない
子どもにとって、いまの日本の学校教育はどんなに残酷なことを強いて
いるのか、二人の発言からもよくわかります。
しかし、彼らは、誰も責めないのです。責めないけど、事実を告発し、
全ての人の責任を問います。それが「戦わないことが闘いである」こと
の意味です。

たいてい「戦う」というのは、相手を説得し、屈服させ、自分の思う
とおりにしようとする勝ち負けの勝負をすることです。しかし、どうやら
彼らの闘いは、そうではないらしいのです。そういう勝ち負けの関係性
そのものを告発しているのだと、私は感じました。どちらが正しいか、と
問うた瞬間にそれはもうある意味の負けとでも言いましょうか、そういう
勝負をしてはいけないんだ、という強い主張を、彼らの発言の裏に私は
聴き取りました。彼らは、これまで、normal(正しさ・ふつう・規範)に
説得され、屈服させられ、思うとおりにさせられようとして傷つけられて
きたからです。

彼らにとって闘いとは、問い続けることです。「あなたは何をどう認める
のか」「あなたはどのように変わろうとするのか」その問いを投げかけ
続けます。あなたのresponse(応え)を聴きたいと、全ての人にresponsibility
(責任)の所在を求めるのです。

特別支援教育の歴史は、差別との闘いの歴史でもありました。
これまでも、そしてこれからもその歴史は続いていくのかもしれませんが、
一方で、この若者たちの闘いを目にして、時代は変わるかもしれないという
予感を、私は抱くに至ったのです。

ユニバーサルデザイン、合理的配慮といった言葉が徐々に普及しつつあり
ます。そのこと自体は歓迎したいとも思うのですが、でも逆にこれらが
「ふつう」になっていくことが、また新たな責任不在を呼び込まないとも
かぎりません。この1年ほどずっと追ってきた概念ですが、思いやりという
一人称的関係と、マニュアル&秩序という三人称的関係に、学校はいとも
たやすく巻き取られます。「ふつう」や「正しさ」を注意深く避け続ける
こと、それが闘いの第一歩であるように思います。

村瀬公胤
一般社団法人麻布教育研究所 所長
(メルマガのバックナンバーURLが変わりました)
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