「麻の葉」第17号
2015/11/19 (Thu) 01:47
麻布教育研究所通信「麻の葉」第17号
またミャンマーに出張して、帰りの機上です。
みなさまご承知の通り、つい先日、歴史的な総選挙が行われ、この国は
未来に向けて大きな一歩を踏み出しました。
大きな混乱はないだろうと予想はしていましたが、街中はほんとうに何も
変わっていませんでした。じつに平穏に、そして元気な街です。それだけ、
民政に移管してからのほんの数年の間が大きい変化だったのかもしれません。
まだ今後の展開は確実ではないかもしれませんが、この成熟度は予想以上
でした。
一方、小さなできごとはありました。4日前に空港に降りてタクシーに乗った
とき、よくある「ジャパン?コリア? Oh、ジャパン、トヨタ」みたいな
やりとりをしているうちに、この運転手さん、少し英語を話します。「We
win, we change, November 8th」みたいな話になるのです。「85% we win.
You know our lady」そこで私はアウンサンスーチーの名を出してよいものか
どうか、一瞬迷いました。一昔前だったら、どこで盗聴されているか、など
心配しなければいけなかったのではないかと思います。でもそれはもちろん
杞憂でした。「Our nation change」と、運転手さんはどこまでも誇らしげです。
この変化のスピードについていくのは、けっこうたいへんです。
今回、日本を立つ直前には、パリの悼ましい事件がありました。何が正義で、
何が真実なのか、私は何者であり、どこへ向かうのか、問い直し続ける時代
です。その直後、OECDのwebミーティングにミャンマーから参加しました。
OECDですから、ホスト会場はもちろんパリです。「Education 2030」という
プロジェクトでして、「今の子どもたちが大人になる2030年に、どのような
コンピテンシーが必要か」という問題について世界中の教育関係者が集まり、
考え、これからの教育を構想していくものです。ほんとうに、どのような
地球・社会になっているのでしょう。
このプロジェクトで、興味深い資料を見ました。それによると、2030年の
社会の重要な特徴は4点、「不安定・不確実・複雑・曖昧」なのだそうです。
これを見て、私は、あぁと思いました。日本の学校が最も苦手としている
のがこの4点ではないでしょうか。学校という場所は、不安定なものを安定
させようとし、不確実なことは見ないで確実なことだけを追求し、複雑な
関係性をなるべくシンプルに了解し、曖昧なものを許さずなんでもはっきり
させようとします。この姿勢に慣れてしまっている学校教育関係者は、どの
ようにして2030年を準備する教育を創りだすことができるでしょうか。
アクティブ・ラーニングにどのような姿勢をとるか、いま盛んに議論されて
います。「小中学校は、以前からアクティブ・ラーニングをしていたから、
いまさら慌てなくてもよい」という意見もあります。私は、それは半分正しい
だろうと思います。でも、それは半分までです。アクティブ・ラーニングが
必要であるという考えの背景には、上述の4点が関わっているのです。その
ことについて、いったいどれほどの人がわかってアクティブ・ラーニングを
論じているでしょうか。
わかったふりは、間違った正義の温床です。わからなさに耐えられる姿勢、
これもまた2030年に必要なコンピテンシーです。
なお、Education 2030 には、私はこちらのプロジェクトを介して関わって
おります。私にとってもひじょうに新しい挑戦であり、刺激的かつタフな
時間を過ごしています。
http://innovativeschools.jp/
村瀬公胤@NH814
一般社団法人麻布教育研究所 所長
名護市教育委員会 学校教育特任アドバイザー
またミャンマーに出張して、帰りの機上です。
みなさまご承知の通り、つい先日、歴史的な総選挙が行われ、この国は
未来に向けて大きな一歩を踏み出しました。
大きな混乱はないだろうと予想はしていましたが、街中はほんとうに何も
変わっていませんでした。じつに平穏に、そして元気な街です。それだけ、
民政に移管してからのほんの数年の間が大きい変化だったのかもしれません。
まだ今後の展開は確実ではないかもしれませんが、この成熟度は予想以上
でした。
一方、小さなできごとはありました。4日前に空港に降りてタクシーに乗った
とき、よくある「ジャパン?コリア? Oh、ジャパン、トヨタ」みたいな
やりとりをしているうちに、この運転手さん、少し英語を話します。「We
win, we change, November 8th」みたいな話になるのです。「85% we win.
You know our lady」そこで私はアウンサンスーチーの名を出してよいものか
どうか、一瞬迷いました。一昔前だったら、どこで盗聴されているか、など
心配しなければいけなかったのではないかと思います。でもそれはもちろん
杞憂でした。「Our nation change」と、運転手さんはどこまでも誇らしげです。
この変化のスピードについていくのは、けっこうたいへんです。
今回、日本を立つ直前には、パリの悼ましい事件がありました。何が正義で、
何が真実なのか、私は何者であり、どこへ向かうのか、問い直し続ける時代
です。その直後、OECDのwebミーティングにミャンマーから参加しました。
OECDですから、ホスト会場はもちろんパリです。「Education 2030」という
プロジェクトでして、「今の子どもたちが大人になる2030年に、どのような
コンピテンシーが必要か」という問題について世界中の教育関係者が集まり、
考え、これからの教育を構想していくものです。ほんとうに、どのような
地球・社会になっているのでしょう。
このプロジェクトで、興味深い資料を見ました。それによると、2030年の
社会の重要な特徴は4点、「不安定・不確実・複雑・曖昧」なのだそうです。
これを見て、私は、あぁと思いました。日本の学校が最も苦手としている
のがこの4点ではないでしょうか。学校という場所は、不安定なものを安定
させようとし、不確実なことは見ないで確実なことだけを追求し、複雑な
関係性をなるべくシンプルに了解し、曖昧なものを許さずなんでもはっきり
させようとします。この姿勢に慣れてしまっている学校教育関係者は、どの
ようにして2030年を準備する教育を創りだすことができるでしょうか。
アクティブ・ラーニングにどのような姿勢をとるか、いま盛んに議論されて
います。「小中学校は、以前からアクティブ・ラーニングをしていたから、
いまさら慌てなくてもよい」という意見もあります。私は、それは半分正しい
だろうと思います。でも、それは半分までです。アクティブ・ラーニングが
必要であるという考えの背景には、上述の4点が関わっているのです。その
ことについて、いったいどれほどの人がわかってアクティブ・ラーニングを
論じているでしょうか。
わかったふりは、間違った正義の温床です。わからなさに耐えられる姿勢、
これもまた2030年に必要なコンピテンシーです。
なお、Education 2030 には、私はこちらのプロジェクトを介して関わって
おります。私にとってもひじょうに新しい挑戦であり、刺激的かつタフな
時間を過ごしています。
http://innovativeschools.jp/
村瀬公胤@NH814
一般社団法人麻布教育研究所 所長
名護市教育委員会 学校教育特任アドバイザー