「麻の葉」第13号
2014/04/30 (Wed) 23:42
麻布教育研究所通信「麻の葉」第13号
年度があらたまりまして、みなさんいかがお過ごしでしょうか。私は、
名護市でのお仕事も継続し、おおよそ昨年度と同じ体制で新年度に入り
ました。毎月2回ほど名護市と本土を往復し、時にまた海外も行くと
いった日々になります。
ところで、昨年度の一つの目標でありました、名護市内小中学校の
自転車による走破ですが、おかげさまで無事に全て到達することができ
ました。自宅アパートを起点に、方面別で4回くらいに分けてツアーを
組みまして、廻りました。
このツアー、完遂したら何かいいことがあるかというと、とくに直接の
利益はありません。市の学校教育特任アドバイザーとして、何かの役に
立つといっても、なんでしょうね、という感じです。
どうやら私は、こうした、直接には役に立たなさそうなことが好きな
ようです。何か目標があるときでも、わざと間接的なアプローチをとる
のが好きなのです。そういえば、あるとき、10歳くらいだった私の娘に
「パパの座右の銘ってなぁに?」と聞かれて、おもしろいことを聞く子
だなあと思いながら、「『急がば回れ』かな」と答えたおぼえがあります。
(ちなみに、「座右の銘」は、当時彼女は歴女だったので、戦国武将の
話か何かで知ったのでしょう)
考えてみますと、教育の世界は、本来の気の長い仕事であるはずなの
に、何かとすぐ役立つことが好まれる場面が多いように思います。
たとえば春先に大型の書店に行くと、先生向けの雑誌を数々見ることが
できまして、そこには「学級開きに使える○○」などの特集がたくさん
あります。また、書籍でも教育関係に“ハウツー”ものがどっさりある
のは、学校の先生ならみなさんよくご存知の通りです。
さらにいまは、なんでもかんでも「学力向上」な風潮ですから、
すぐに学力が上がりそうなことには、個々の先生のみならず、行政は
なおさらいっそうすぐ飛びつきたくなりそうですし、じっさいに飛び
ついているのをあちこちで見るでしょう。
しかし、私は、そういうのが好きではないのです。外堀からいく
というか。たとえば2年ほど前に、国際地学オリンピックの引率で
アルゼンチンに行ったときも、アルゼンチンの名所とか名物を予習
していけばいいところを、「ボルヘスの短編集でも読んでおくかな」、
という発想をするのです。また、2011年の大地震による原発事故で
放射能の問題が起きたときは、この時代に父として娘に何をしてやれる
かと考え… 私は娘にマリー・キュリーの伝記本を買ってやりました。
かなり遠いアプローチですね。
いつごろからそういう遠いアプローチを好むようになったのか、もう
記憶も辿れませんが、子どもの時分に好きだった寓話が『北風と太陽』
だったことを思うと、かなり早い時期からなのかもしれません。
学力問題も、「急がば回れ」が当てはまると私は信じているのですが、
みなさんには賛同していただけるでしょうか。「急がば回れ」に必要な
ものは、それを愉しむ心の余裕と、それを完遂する覚悟の二つです。
自分自身にそのことを言い聞かせながら、いまの仕事を続けてまいり
たいと思います。
村瀬公胤
一般社団法人麻布教育研究所 所長
名護市教育委員会 学校教育特任アドバイザー
年度があらたまりまして、みなさんいかがお過ごしでしょうか。私は、
名護市でのお仕事も継続し、おおよそ昨年度と同じ体制で新年度に入り
ました。毎月2回ほど名護市と本土を往復し、時にまた海外も行くと
いった日々になります。
ところで、昨年度の一つの目標でありました、名護市内小中学校の
自転車による走破ですが、おかげさまで無事に全て到達することができ
ました。自宅アパートを起点に、方面別で4回くらいに分けてツアーを
組みまして、廻りました。
このツアー、完遂したら何かいいことがあるかというと、とくに直接の
利益はありません。市の学校教育特任アドバイザーとして、何かの役に
立つといっても、なんでしょうね、という感じです。
どうやら私は、こうした、直接には役に立たなさそうなことが好きな
ようです。何か目標があるときでも、わざと間接的なアプローチをとる
のが好きなのです。そういえば、あるとき、10歳くらいだった私の娘に
「パパの座右の銘ってなぁに?」と聞かれて、おもしろいことを聞く子
だなあと思いながら、「『急がば回れ』かな」と答えたおぼえがあります。
(ちなみに、「座右の銘」は、当時彼女は歴女だったので、戦国武将の
話か何かで知ったのでしょう)
考えてみますと、教育の世界は、本来の気の長い仕事であるはずなの
に、何かとすぐ役立つことが好まれる場面が多いように思います。
たとえば春先に大型の書店に行くと、先生向けの雑誌を数々見ることが
できまして、そこには「学級開きに使える○○」などの特集がたくさん
あります。また、書籍でも教育関係に“ハウツー”ものがどっさりある
のは、学校の先生ならみなさんよくご存知の通りです。
さらにいまは、なんでもかんでも「学力向上」な風潮ですから、
すぐに学力が上がりそうなことには、個々の先生のみならず、行政は
なおさらいっそうすぐ飛びつきたくなりそうですし、じっさいに飛び
ついているのをあちこちで見るでしょう。
しかし、私は、そういうのが好きではないのです。外堀からいく
というか。たとえば2年ほど前に、国際地学オリンピックの引率で
アルゼンチンに行ったときも、アルゼンチンの名所とか名物を予習
していけばいいところを、「ボルヘスの短編集でも読んでおくかな」、
という発想をするのです。また、2011年の大地震による原発事故で
放射能の問題が起きたときは、この時代に父として娘に何をしてやれる
かと考え… 私は娘にマリー・キュリーの伝記本を買ってやりました。
かなり遠いアプローチですね。
いつごろからそういう遠いアプローチを好むようになったのか、もう
記憶も辿れませんが、子どもの時分に好きだった寓話が『北風と太陽』
だったことを思うと、かなり早い時期からなのかもしれません。
学力問題も、「急がば回れ」が当てはまると私は信じているのですが、
みなさんには賛同していただけるでしょうか。「急がば回れ」に必要な
ものは、それを愉しむ心の余裕と、それを完遂する覚悟の二つです。
自分自身にそのことを言い聞かせながら、いまの仕事を続けてまいり
たいと思います。
村瀬公胤
一般社団法人麻布教育研究所 所長
名護市教育委員会 学校教育特任アドバイザー