「麻の葉」第4号
2012/08/10 (Fri) 22:59
麻布教育研究所通信「麻の葉」第4号
みなさまお元気ですか。おかげさまで不定期ながら「麻の葉」も
第4号までになりました。今月は学校訪問がとくに多い月です。
いっぽうで、大学の非常勤講師も7月までは週に2回あるので、
ここのところずっと体力勝負です。訪問先は、関東近県以外に、
今月第2週は長野県佐久市、第3週は沖縄県名護市、第4週は福島県
須賀川市などが続きました。このあいだ、ある学校の校長先生に
「お疲れですね」とずばり言われてしまいました。さすが熟練
教師の目はごまかせないです。
さて、一つの非常勤講師先の「教育原理」では、100名弱の受講生が
います。この全員が寝ないような講義ができるだろうかと、自分で
挑戦中です。ふだん私は、「対話のある授業を」などと偉そうなことを
語っているアドバイザーですから、100人の講義でどのようにすれば
対話のある学びになるかを考えなければいけません。
この難問、困ったなあと思うのですが、「困ったときには子どもに
預ければよい」というのが私の授業原則なので、自分の科目でも学生
に委ねることにしました。大教室の講義には限界があることを認め
つつ、それを克服するには「君たちの協力が必要である」こと、
「講義は学生と教員の協働である」ことを、第一回の講義で宣言し
ました。そして、双方向の講義(授業)を作りたいので協力して
ほしいともお願いしました。
双方向化の第一歩として、私は「携帯電話のスイッチはオンにする」
よう学生に言いました。「オフ」ではなく「オン」です。学生の携帯
電話と、私のPCのメーラーで、意見集約アンケートシステム兼出欠確認
システムとするのです。じつは私、自分のドメイン(メールアドレスの
@以下の部分)を持っているので、yes@pedagogy.jpとno@pedagogy.jp
というようなアドレスを作れるのです。そこで、たとえば、「高校は
制服ではなく私服にすべき」というお題を出して、「賛成はyesに、
反対はnoにいま携帯からメールを出しなさい」と言うのです。メール
タイトル(件名)には学籍番号と氏名を書かせ、メール本文には賛成
または反対の理由を書かせます。それを即座にPCのメーラーで受信し
つつプロジェクターでスクリーンに映せば、賛成と反対のどちらが
多いか、それはどのような理由かが学生にすぐにフィードバックされ
るのです。さらに私は、そのメールに返信をします。それが指名の
代わりで、「メールが来た人は立って自分の意見と理由を述べてくだ
さい」と言います。最近流行りの視聴者参加型のTVみたいなもので、
学生にとってはけっこうたのしいようです。
こんなことをしながら、最近はより本格的に協同学習にも挑戦し
始めました。とにかくいま私が講義をデザインするうえで最重要に
考えていることは、「どうしたら自分がしゃべる時間を短くできるか」
です。これさえできれば、対話のある授業づくりは楽にできます。
自分が説明する代わりに、学生に資料から読み取らせ、要約させます。
学生が読み取ったことは、発表させ、共有させます。共有させたこと
から、自分の意見を考えさせます。その時々で、「おとなりと相談
してごらん」ということにしています。最近は4人グループも始め
ました。グループの作り方も「男女混合」だけを指示して、あとは
「3分でどうぞ」と任せてみたところ、初回は4分30秒でできました。
じつのところ、「委ねる・預ける・任せる・信じる・待つ」が私の
「教育原理」なのかもしれません。
でも、ほんとうにまだまだです。まず自分で下手だなあと思う
のは、“一往復半”です。私→学生→私まで応答が続いたときに、
つぎに別の学生につなぐ、これが“一往復半”なのですが、未熟な
私にはこれがうまくできません。また、先日は資料の提示がいまいち
で、そうなると学生の活動も低調になります。「ああ、失敗したな」
と思うのですが、強引にまとめてしまいました。ここで学生に委ねる
ことができたらプロだろうなと思うのですが、私はまだ勇気が足り
ないのですね。
こんな感じで至らないことばかりなのですけど、挑戦することは
たのしいことでもあります。いつも学生に感謝しています。
村瀬公胤
麻布教育研究所
みなさまお元気ですか。おかげさまで不定期ながら「麻の葉」も
第4号までになりました。今月は学校訪問がとくに多い月です。
いっぽうで、大学の非常勤講師も7月までは週に2回あるので、
ここのところずっと体力勝負です。訪問先は、関東近県以外に、
今月第2週は長野県佐久市、第3週は沖縄県名護市、第4週は福島県
須賀川市などが続きました。このあいだ、ある学校の校長先生に
「お疲れですね」とずばり言われてしまいました。さすが熟練
教師の目はごまかせないです。
さて、一つの非常勤講師先の「教育原理」では、100名弱の受講生が
います。この全員が寝ないような講義ができるだろうかと、自分で
挑戦中です。ふだん私は、「対話のある授業を」などと偉そうなことを
語っているアドバイザーですから、100人の講義でどのようにすれば
対話のある学びになるかを考えなければいけません。
この難問、困ったなあと思うのですが、「困ったときには子どもに
預ければよい」というのが私の授業原則なので、自分の科目でも学生
に委ねることにしました。大教室の講義には限界があることを認め
つつ、それを克服するには「君たちの協力が必要である」こと、
「講義は学生と教員の協働である」ことを、第一回の講義で宣言し
ました。そして、双方向の講義(授業)を作りたいので協力して
ほしいともお願いしました。
双方向化の第一歩として、私は「携帯電話のスイッチはオンにする」
よう学生に言いました。「オフ」ではなく「オン」です。学生の携帯
電話と、私のPCのメーラーで、意見集約アンケートシステム兼出欠確認
システムとするのです。じつは私、自分のドメイン(メールアドレスの
@以下の部分)を持っているので、yes@pedagogy.jpとno@pedagogy.jp
というようなアドレスを作れるのです。そこで、たとえば、「高校は
制服ではなく私服にすべき」というお題を出して、「賛成はyesに、
反対はnoにいま携帯からメールを出しなさい」と言うのです。メール
タイトル(件名)には学籍番号と氏名を書かせ、メール本文には賛成
または反対の理由を書かせます。それを即座にPCのメーラーで受信し
つつプロジェクターでスクリーンに映せば、賛成と反対のどちらが
多いか、それはどのような理由かが学生にすぐにフィードバックされ
るのです。さらに私は、そのメールに返信をします。それが指名の
代わりで、「メールが来た人は立って自分の意見と理由を述べてくだ
さい」と言います。最近流行りの視聴者参加型のTVみたいなもので、
学生にとってはけっこうたのしいようです。
こんなことをしながら、最近はより本格的に協同学習にも挑戦し
始めました。とにかくいま私が講義をデザインするうえで最重要に
考えていることは、「どうしたら自分がしゃべる時間を短くできるか」
です。これさえできれば、対話のある授業づくりは楽にできます。
自分が説明する代わりに、学生に資料から読み取らせ、要約させます。
学生が読み取ったことは、発表させ、共有させます。共有させたこと
から、自分の意見を考えさせます。その時々で、「おとなりと相談
してごらん」ということにしています。最近は4人グループも始め
ました。グループの作り方も「男女混合」だけを指示して、あとは
「3分でどうぞ」と任せてみたところ、初回は4分30秒でできました。
じつのところ、「委ねる・預ける・任せる・信じる・待つ」が私の
「教育原理」なのかもしれません。
でも、ほんとうにまだまだです。まず自分で下手だなあと思う
のは、“一往復半”です。私→学生→私まで応答が続いたときに、
つぎに別の学生につなぐ、これが“一往復半”なのですが、未熟な
私にはこれがうまくできません。また、先日は資料の提示がいまいち
で、そうなると学生の活動も低調になります。「ああ、失敗したな」
と思うのですが、強引にまとめてしまいました。ここで学生に委ねる
ことができたらプロだろうなと思うのですが、私はまだ勇気が足り
ないのですね。
こんな感じで至らないことばかりなのですけど、挑戦することは
たのしいことでもあります。いつも学生に感謝しています。
村瀬公胤
麻布教育研究所