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「麻の葉」第3号

2012/08/10 (Fri) 22:55
麻布教育研究所通信「麻の葉」第3号

 先週は、八千代市立睦中学校にシンガポールのヒルグローブ中学校の
先生・生徒が訪問してくる事業に参加させていただきました。これは
もう足かけ3年の事業で、昨年夏には、睦中学校の生徒たちと先生・
保護者・地域の方々がヒルグローブ中学校を訪問して、私も参加させて
いただきました。
 今年はヒルグローブ中学校の生徒たちが睦中の生徒さんたちの家庭で
ホームステイし、いっしょに中学校に登校します。一方、先生たちは、
睦小学校の見学、米本小学校での校内研修に参加などをして研修という
ことでした。

 いっしょに小学校の教室を回っていると、おもいしろいことにたくさん
気づかされます。たとえば彼らは、〈日直〉という制度に興味津々でした。
「どのような教育効果があるのか、日本ではどの学校でもやっているのか、
いつから始まったのか」とか、言われてみるとおもしろいなあと思います。
だいたい、どうして2人と決まっているのかさえ、私たちは知らなかったり
します。また、ランドセルにも驚いていました。「みんな同じ型のカバンを
持っているが、これは何か規則があるのか」と聞かれると、そうですねえと、
こちらが考え込まされます。
 そんなふうに異邦人の目で見てみると、私も発見することがありました。
日本の教室には、とにかく〈目標〉があふれています。黒板の上には、
「学校目標」と「学年目標」と「学級目標」が並んでいて、さらに横を見ると
「今月の目標」まである様子は、けっこうコミックです。管理社会を描いた
SF小説にでも出てきそうです。(でも欧米の研究者は、「日本の学校は目標を
皆で共有していて素晴らしい」とよく賞賛します)

 ちなみに私は、外国の学校に行ったとき、黒板の中央上に何があるのかに
興味があります。たいていは、国旗か、大統領の写真かの二択です。インド
ネシアの場合は、真ん中に「パンチャシラ」という建国5か条のようなものが
あり、左右に大統領と副大統領の写真というのが平均的です。そして、日本では
何がそこにあるかというと、スピーカーなのですね。ああ、この国では、教室
とはそういう空間として成立しているのだなと思わされる、象徴的な風景です。
あるいは、時計がそこに鎮座しているときもあります。日本では、首相の写真は
貼り換えにコストがかかりすぎるので貼れないという冗談はともかく、いったい
ここには何が配置されていたらよいのでしょうか。
 現在、スピーカーの上にはたいてい、子どもたちの手書きによる学級目標が
置かれています。これは日本の教育者たちが生み出した貴重な答えでしょう。
それは誇るべき答えだと思う一方で、子どもたちが向き合うべき公共的価値=
共通善の軸は必要ないのかという問いが残ります。向きあうとは、この場合、
従うことと問い直すことを同時に含んでいます。さらに、問い直すとは、その
価値を問い直すことと、自分の姿を省みて問い直すことも含んでいるかもしれ
ません。
 戦後の日本人が、ここに単一の宗教を置くこともイデオロギーを置くことも
否定したことは正しかったと私は思います。統一する何かを置くことを拒否
して生まれたこのスペースは、代わりに日々の教育実践が埋めるのかもしれ
ません。スピーカーによって共通善が配られるのではなく、自分たちの多様な
価値の意義を交換・交歓し、ともに再構成し続ける実践の場として教室がある
ことを、黒板の上を見ながら想うときがあります。

村瀬公胤
麻布教育研究所

p.s. 先日の金環日食の写真をアップしました。
http://azabu-edu.net/ecl/DSC00009.jpg
曇り空がフィルターのかわりをしてくれまして、ふつうのデジカメでも何も
せずに直接撮影ができました。