東京ビエンナーレジャーナル VOL.04
見なれぬ景色へ
2021.05.15
TOKYO BIENNALE 2020/2021

第1回「山形ビエンナーレ」ポスター(デザイン:akaoni)/東京ビエンナーレ2020/2021ポスター(デザイン:ASYL)/「ソーシャルダイブ・スタディーズ」ビジュアルイメージ
※2021年5月15日15:30に配信いたしました内容に誤りがございましたため、改めてお送りさせていただきます。お詫び申し上げます。

「みちのおく」から「見なれぬ景色」へ

2021年1月よりプログラムディレクターとして東京ビエンナーレに参加した宮本武典です。
ビエンナーレの立ち上げに関わるのは2度目で、2014年に山形で「みちのおくの芸術祭 ビエンナーレ」を創設し、第3回までプログラムディレクションを手掛けました。第1回山形ビエンナーレは東日本大震災の発生からまだ3年というタイミングで、復興支援ボランティアのピークは過ぎ去ったものの、津波に破壊された沿岸部では土砂を積んだ巨大なダンプカーが行き交い、浜通りでは除染も住民帰還も道半ばという状況でした。そんななかで掲げた「みちのおくの」という山形ビエンナーレのコピー、これは私がつけたものです。
「みちのく」という名付けは、中央からの辺境への眼差しであり、実は東北人にとっては、少し感情をざらつかせる言葉です。そこにあえて「お」を差し込んで、古くからのイメージを柔らかく更新しつつ、「東日本大震災以後」という「道の奥/未知の奥へ」という決意を込めました。津波のあとの一面の瓦礫、汚染された無人の商店街に立ったとき、「ここから日本はどうなっていくのだろう」と身震いしました。喪失と向き合わざるを得ない東北から見える風景こそが「創造の最前線」であり「未知の奥」であるという気概が、第1回の山形ビエンナーレ創設時にはあったのです。
そして、第1回東京ビエンナーレのテーマは「見なれぬ景色へ」。
キュレーターの私にとって偉大な先達である小池一子さんが掲げたこの言葉のもと、ともに被災地支援に汗を流した中村政人さんと、再びのビエンナーレ創造で協働できることに、不思議な縁を感じています。緊急事態宣言下で生成されるこの国際芸術祭は、非常時ゆえに否応なく他のどのビエンナーレとも似ていない風景と体験を創出するでしょう。世界全体をパンデミックが覆うなか、東京もまた「みちのおく」、未踏の領域に入り、震災直後と同様、政治のリーダーシップに街場の運命を委ねることは難しいようです。3.11被災地がそうだったように、その場にいる私たち市民一人一人が、強いリーダーにはなれなくても、困難な状況をリードして、家族・仕事・文化・地域を守っていかなければなりません。
まさに東京ビエンナーレは、60以上の小さなプロジェクトが「地場から発する」ようにあちこちで自発的に組織されており、コロナ禍のなかでも制作活動を続けています。おそらく7月10日に芸術祭が開幕しても、これらのトライアルは続行中でしょう。「何が有効か?」「 どっちが正しいか?」専門家でも分からない混沌とした街場から、たくさんのプロジェクトとリーダーが自ずと生み出され(私もかつてその一人でした)自らの方法論と文化的な自立を獲得していくはずです。
今はまだバラバラな「いくつもの東京」を体現する、街区ごとに路地ごとに異なるアートプロジェクトの実践知。これを群島のようにつなぎ、「これからの東京」を創造する学びと協働の運動体にしていくために、東京ビエンナーレでは6月より 「ソーシャルダイブ・スタディーズ(以下SDS)」を開講します。SDSは、2020年に都下の大学教員有志によって組織された「学環創出プロジェクト」を礎にひらかれ、研究者、アーティスト、市民、学生が「東京ビエンナーレ」というフィールドで、ともに学び、ともに創る場です。授業に登壇するメンバーは、自らも東京ビエンナーレという群島のひとつを担っている実践者たち。 「ロイダッツチャリティーショップ」の山崎亮さんや 「デザインプロジェクト」の原田祐馬さんなど、全国各地のコミュニティデザインを牽引する第一人者に加え、 スマイルズの遠山正道さん AR三兄弟の川田十夢さんなど、これからの東京アートシーンを拡張していくイノベーターに参画いただきます。
私たちの文化現場は、新型コロナウイルスにただただ蹂躙されたままで終わることにはない。ここからまた、東京にあたらしいオルタナティブな場所を興していくためにつながり、皆で学び直しましょう。「見なれぬ景色」を共に拓いていく多くの仲間と、SDSで出会えることを楽しみにしています。
宮本武典
東京ビエンナーレ2020/2021 プログラムディレクター
東京ビエンナーレ2020/2021「 東京影絵クラブ」メンバー


CURRENT & UPCOMING INFORMATION

前売券発売開始!

4月26日月曜日、7月開催に向けて前売券の発売を開始しました!
パスポート前売券(4月26日~6月30日)一般2000円、学生1500円です。
合わせて公式サイトも更新しましたので内容をチェックして頂き、お得な前売券の購入を是非ご検討下さい。
https://tb2020.jp/ticket/

メンバー募集「ソーシャルダイブ・スタディーズ」

東京ビエンナーレ2020/2021をフィールドに「アートを実装する」アートプロジェクトスクールを開講いたします。開催地・東京の未来をともに拓いていく仲間を募集中。5/19(水)と5/22(土)に説明会を開催いたします。ぜひご参加ください。
https://tb2020.jp/ongoing/sds1/


家族の晩ご飯への招待と引き換えに絵画をプレゼントします

家族の晩ご飯へ贈られる絵画 東京編 / A PAINTING FOR A FAMILY DINNER, TOKYO

夫婦でもある2人組のアーティストが、東京北東エリアに住む家族の晩ご飯への招待と引き換えに絵画をプレゼントします。
現在の状況を考慮して、晩ご飯はZoom越しに行われます。
詳細はメール(residence_sd[at]3331.jp)にてお問い合わせください。

募集期間 2021年5月13日(木)~2021年6月13日(日)まで
*定員に達した時点で募集を終了させていただきます。


村山修二郎 「動く鉢」 オーナーとして植物を育てていただける方を募集しています!
(6月4日締切)

「動く土 動く植物」プロジェクトとは、都市における土や植物とのつながりと寄り添い、コミュニケーションのツールとして「動く鉢」を使った活動を展開していくアートプロジェクトです。
本プロジェクトの第2歩期間「動く鉢」オーナーとなり、家族・パートナーとして育てていただける方を募集します!
https://tb2020.jp/news/202104_murayama/


「玉川上水46億年を歩く」
リー智子さんと一緒に、玉川上水の取水口(水源)の羽村取水堰から半蔵門までの46kmを、地球史46億年と見立て歩くプロジェクト。
長い地球史の中で人類の歴史は20万年。46kmの中でたったの2メートルです。
地球におけるヒトという存在は一体何か、歩きながら考えること。
頭では理解しているつもりのものを身体性を通して改めて感じることの大切さ。
東京ビエンナーレ2020/2021で、その記録をお見せします。

プロジェクト:
https://tb2020.jp/project/tamagawa-josui-4-6-billion-years-walk/

Facebook:
https://www.facebook.com/chimukui


RECOMEND INFORMATION
東京ビエンナーレが発信する情報をピックアップしてご紹介します。

東京ビエンナーレ2020/2021の公式noteです。

参加アーティストやディレクター、市民委員会の方々等のインタビューや対談、寄稿記事、また作品の進捗などをご紹介いたします。

批評とメディアの実践のプロジェクト

東京ビエンナーレのプロジェクトの一つとして「リレーションズ:批評とメディアの実践のプロジェクト」を立ち上げます。このプロジェクトは、主としてウェブやソーシャルメディアを中心にデジタル化とグローバル化の時代の批評とメディアのあり方を考えると同時にその実践を行うことを目指します。

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校「アートライティングスクール」のnoteサイトです。受講生の記事を中心に公開します。本校は「東京ビエンナーレ2020/2021」のソーシャルプロジェクトのひとつで、プロジェクトディレクターは美術評論家の福住廉です。

TOKYO BIENNALE note
TALK: 畠山直哉×宮永愛子×福住 廉
東北の震災後の地域を見つめ続ける写真家の畠山直哉、ナフタリンという展示していて形態が変わってゆく素材を扱い目に見えない何かを表現するアーティストの宮永愛子、評論家という視点で冷静かつ明確にアートに寄り添い言葉で発信を続けてきた福住廉がゲスト。それぞれの立場で、コロナ禍の近況から、「見る」とはどういうことなのか。話は多方面に広がった。
(聞き手・文:上條桂子)


TOKYO BIENNALE note
INTERVIEW: 川村亘平斎+宮本武典
不思議な響きが幻想的な光景を描き出す楽器ガムランの演奏家であり、インドネシア伝統の影絵芝居(ワヤン・クリット)を行うアーティストの川村亘平斎さんは、アートディレクターの宮本武典さんが取り組むプロジェクト「東京影絵」は、東京に暮らす19カ国/60名の外国にルーツを持つ人々に聞いた話から立ち上がる、新しい東京の物語である。彼らの目線から見えてきた、新しい東京の姿について語っていただいた。
取材・文 上條桂子(編集者)

RELATIONS
ホロコーストを描くことは可能か?――ドイツ人画家、ゲルハルト・リヒターが自作をベルリンのナショナルギャラリーに永久貸与した理由
河内秀子
2021年3月、ゲルハルト・リヒターがベルリンのナショナル・ギャラリーに100点以上の作品の永久貸与を決めた。その中から、現在旧ナショナル・ギャラリーで展示されているビルケナウ・アウシュヴィッツ強制収容所で撮影された写真をモチーフとした「ビルケナウ」シリーズを取り上げ、「これらの作品は、ドイツにとどまらなければいけない」というリヒターの言葉を、ベルリン在住のジャーナリスト河内秀子が考察する。
Photo:ゲルハルト・リヒター (c) Werner Bartsch


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東京ビエンナーレ賛助会員のお申込について
「一般社団法人東京ビエンナーレ」では、東京ビエンナーレの運営・実施を支える「賛助会員」を募集いたします。市民を主体に東京で立ち上がる、新たな動きにご賛同頂ける個人・法人の皆様のご参加を心からお待ちしております。様々な形で東京ビエンナーレを知りながら、応援いただければ幸いです。

このメールは、一般社団法人東京ビエンナーレ、東京ビエンナーレ事務局と名刺交換させていただいた方にお送りさせていただいております。
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東京ビエンナーレ2020/2021
見なれぬ景色へ ―純粋×切実×逸脱―

開催期間:2021年7月~9月
※会期は変更になる場合があります。

一般社団法人東京ビエンナーレ