東京ビエンナーレジャーナル VOL.14
見なれぬ景色へ
2022.10.14
TOKYO BIENNALE

リンケージのなかの私たちへ
 
東京ビエンナーレ2023の総合ディレクターを務める西原みんです。
 
2023年開催の東京ビエンナーレのテーマは「リンケージ つながりをつくる」です。
つくる、と言うよりも、見つけるとか再発見する、と言った方が良いかもしれません。
なぜなら、私たちはすでに精巧につくりあげられた複雑な関係性の世界で日々を過ごしているからです。
特段事件もなかった平穏な今日一日を振り返ってみても、住んでいる街、働いている街、街の人々、街の歴史、建築空間、様々な運搬手段で流通している食品や物品、街の内外の自然(微生物から地形まで!)、スマートフォンやパソコンの向こうの情報ネットワーク―私たちは何重にも周囲の社会環境と関わっています。
 
アートはこれまでにもこの関係性に挑み、多くのアーティストたちが社会環境と私たちの関係性が明らかに分かる切片を、混沌とした中から取り出して見せてきました。手品を見せるかのようなアーティストのその技に、圧倒されたり、感動したり、すとんと納得した経験がある人は多いのではないでしょうか。
東京ビエンナーレ2023では、そんなアーティストの活躍はもちろんのこと、東京の地場に発する芸術祭として、江戸・東京という場所を手がかりに、アーティストばかりでなく「東京というつながり」の中にいる人たちがそれぞれの関係性をより深く広く見いだし、さらには新しいつながりが生まれ、深める場となることを目標としています。
「東京というつながり」の中にいる人たちというのは、つまり私たち。
そして、東京ビエンナーレはそんなつながり(リンケージ)の中にいる私たちのための芸術祭です。
まずは、はじまり展で紹介されているどれかのリンケージに参加することで、この芸術祭につながってください。
その後はどうするか、ですか?―もちろん、一緒に芸術祭をつくっていきましょう!
 
ところで、関係性というと、私は臨床心理学の家族療法の授業で教わったグレゴリー・ベイトソンの次の言葉を思い出します。「手を見るとき、指を見るのではなく、指と指の間を見なさい」。
間になにがあるのか、間はなにを意味しているのか、間はどうなろうとしているのか―例えば誰かが精神的に不調だとか、家族のなかに問題があるとき、家族のひとりひとりを変えることは難しいけれど、個人間の関係性を変えることは比較的容易にできるのです。
アートという領域でも、ひとつひとつの作品やプロジェクトを見ていくばかりではなくて、少し視界を広くして、プロジェクトとプロジェクトの間を見ていくことができそうな気がします。
そしてそのことが、キュレーターとしての私にとっての、リンケージという東京ビエンナーレのテーマとのつながりにもなっています。
 
さて、最初に書いておいて申し訳ないですが、総合ディレクターと名乗るのには少々抵抗があって、私はずっと「カーソル」ディレクターと呼んで欲しいと表明しています。
カーソルというのは、パソコンの画面や、ちょっと構えた会議のプレゼン画面の上なんかで移動している、あの矢印のカーソルです。
なぜ、カーソルなのかといえば、文字や図版で表された内容はもちろん大事なのですが、その内容が実際に[生きる]ために、画面に投げ出されたいろいろな人たちや場所や組織の名前やアイデアやなどを自由につないで「ここも考えてみては?」「これとこれ、関係あるのでは?」と示すカーソルの、地味だけれど大事な役割を担ってみたいと思ったからです。
東京ビエンナーレ2023は(そして私は)、関係性のなかで潜在的な可能性を指し示すためのカーソルなのかもしれません。少なくとも、その役を果たしたいと思います。
東京ビエンナーレ2023 総合ディレクター 西原みん
※「みん」の漢字は「王へん」に「民」ですが、環境依存文字による
文字化けを防ぐため本テキストではひらがなとします。

TOKYO BIENNALE NEWS

10/6(木)~10/30(日)「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」開催中!
東叡山 寛永寺をメイン会場に開催中の『東京ビエンナーレ2023 はじまり展』では、2023年に向けた計画を紹介する展示と、既に開始している複数のアートプロジェクトをご覧になれます。
最新情報はこちら> https://tokyobiennale.jp/

批評とメディアの実践のプロジェクト[Relations]主宰
10/15(土)シンポジウム「都市型国際芸術祭はどこに向かうのか?~ポストコロナ、アートの変容、そして新しい関係性~」
日本人アーティストのインタビュー調査や国際芸術祭の調査に取り組んでいるクレリア・ゼルニック(パリ国立高等芸術大学教授)、日本の地域型国際展覧会の研究者のグンヒルド・ボーグリーン(コペンハーゲン大学准教授)、そしてキュレーターの西原みんを登壇者に迎え、都市型国際芸術祭の未来を論じます。日・英・仏のバイリンガルで聞くことができます。
お申込み・詳細はこちら> https://artsticker.app/events/1727

10/16(日)トークセッション「リレートーク 東京ビエンナーレ2023を語ります」
東京ビエンナーレ2023の構想を多様な作家・企画者陣が語ります。
本イベントでは、連続的に参加プロジェクトがプレゼンテーションを行い、どのような事を考え誰と活動をしていきたいのか知る事が出来ます。これらプロジェクトの集合として、東京ビエンナーレ2023の全貌を掴むことが出来る貴重な機会です。
お申込みはこちら

RECOMEND INFORMATION
東京ビエンナーレが発信する情報をピックアップしてご紹介します。

東京ビエンナーレ2020/2021の公式noteです。

参加アーティストやディレクター、市民委員会の方々等のインタビューや対談、寄稿記事、また作品の進捗などをご紹介いたします。

批評とメディアの実践のプロジェクト

このプロジェクトは、主としてウェブやソーシャルメディアを中心にデジタル化とグローバル化の時代の批評とメディアのあり方を考えると同時にその実践を行うことを目指します。

東京ビエンナーレ賛助会員のお申込について
「一般社団法人東京ビエンナーレ」では、東京ビエンナーレの運営・実施を支える「賛助会員」を募集いたします。市民を主体に東京で立ち上がる、新たな動きにご賛同頂ける個人・法人の皆様のご参加を心からお待ちしております。様々な形で東京ビエンナーレを知りながら、応援いただければ幸いです。

「東京ビエンナーレ2020/2021 記録集」好評発売中
緊急事態宣言下で開催された国際芸術祭「東京ビエンナーレ2020/2021」。
本書では、オリンピックとパンデミックにゆれた2021年の首都に、つかのま出現した”見なれぬ景色”たち -70のアートプロジェクトを総覧します。
詳細、ご購入はこちら↓
https://tokyobiennale.stores.jp/
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