東京ビエンナーレジャーナル VOL.11
見なれぬ景色へ
2022.2.1
TOKYO BIENNALE


東京ビエンナーレ2020/2021 記録集発刊によせて

東京ビエンナーレでウェブサイトや広報物、記録集等のテキストまわりを担当している、フリー編集者の上條桂子と申します。
「東京ビエンナーレ2020/2021」の本会期は無事に終了しましたが、それで芸術祭は終わりではありません。現在、「東京ビエンナーレ2020/2021」とはどんな芸術祭だったのかを振り返って皆さんと共有し、ともに考えることができるよう、ドキュメント記録集の制作を進めています。編集制作は、私とプログラムディレクターの宮本武典、クリエイティブディレクター佐藤直樹、デザイナーの菊地昌隆の4名で進めています。

東京ビエンナーレに関わってくださった方、観賞された方はおわかりかと思いますが、たぶん「東京ビエンナーレ2020/2021」をぜんぶ体験したぞ!という方はほとんどいらっしゃらないでしょう。逆にいらしたら、お話をお伺いしたいくらいです。エリアも広く、プロジェクト数も多く、各所でかわるがわるイベントが開催されていた「東京ビエンナーレ2020/2021」の全貌を掴むのは、私たちスタッフでもかなりの困難です。参加されたアーティストの方々も、ご自身のプロジェクトにかかりっきりで、なかなかゆっくり他のプロジェクトの様子を見て回ることができなかったのではないでしょうか。実際、ほぼ全プロジェクトの会場の撮影を担当した私も、全部見られたかというと首をかしげてしまいます。

本記録集では、できる限り会場を巡り撮影した写真の他、各プロジェクトの実現に際し、現場ではどんなことが起きていたのかという、皆さんの“声”を集めた一冊にしたいと考えています。また、本芸術祭はコロナ禍に開催された芸術祭のひとつであり、このような世界的パンデミックの渦中でどんな思いでプロジェクトを実現させていったのかを語る本書は貴重な証言集のようなものでもあります。記録集は以下のような構成です。

・風景:各プロジェクトの会場。写真による記録。(撮影=ゆかい)
・声:各プロジェクトのドキュメント。プロジェクトの経緯、コロナ禍での困難や作品の変更、実現した内容について、アーティスト自身の言葉で執筆。
・テキスト:東京ビエンナーレとはどんな芸術祭なのか? 様々な立場の方からご執筆いただいています。(執筆者敬称略:吉見俊哉、陣内秀信、並河進、中西忍、毛利嘉孝、小池一子等)

皆さまからお預かりした原稿を読むと、コロナ禍にあったかどうかにかかわらず、言葉にしてしまうと簡単になってしまいますが、いろいろあったのだなあと感慨深い気持ちになります。こんな状況下でも、考えること、手を動かすこと、作ることを止めずに、作品を実現させる皆さんのエネルギーに改めて感動しました。

この記録集が、2020年~2021年という奇妙な時期に行われた「東京ビエンナーレ2020/2021」を思い出し、さらなる議論を呼ぶ契機になりましたら幸いに存じます。
寒さが和らぐ時期に、皆さまにお披露目できるよう頑張りまーす。
上條 桂子
東京ビエンナーレ 編集者

CURRENT & UPCOMING INFORMATION

2022年春 「東京ビエンナーレ2020/2021 記録集発刊」
コロナ禍で開催となった「東京ビエンナーレ2020/2021」。出入国の停止、人流の抑制、自粛とステイホームで、あらゆる文化シーンが危機的状況に陥るなか、参加アーティストたちはどのように東京の地場でプロジェクトをサバイヴしたのでしょうか? 
本書はゆかい撮影による「風景」編と、全参加アーティストが寄稿するテキスト群=「声」編を450頁で綴じ、オリンピックとパンデミックにゆれた2021年の東京に、つかのま出現した「見なれぬ景色」を総覧します。3月中旬刊行。


令和4年度東京ビエンナーレ賛助会員の募集
東京ビエンナーレの運営・実施を支える「賛助会員」を3月より募集いたします。
賛助会員制度は、より多くの方との関わりの中で新しい芸術祭を創りたいという想いのもと設立された会員制度です。令和4年度は、東京ビエンナーレの第2回目開催(2023年)に向けての始動の年となります。プレイベントとして新たな作家のアートプロジェクトの計画を発表するともに、プロジェクト推進のための地域コミュニティとの接続や企業・団体との協働を行なってまいります。
「アート×コミュニティ×産業」をキーワードに、市民が主体となり都市の可能性を引き出す創造的な活動の実践を目指す「東京ビエンナーレ」に、ご賛同頂ける個人・法人の皆様のご参加を心からお待ちしております。
https://tokyobiennale.jp/membership


RECOMEND INFORMATION
東京ビエンナーレが発信する情報をピックアップしてご紹介します。

東京ビエンナーレ2020/2021の公式noteです。

参加アーティストやディレクター、市民委員会の方々等のインタビューや対談、寄稿記事、また作品の進捗などをご紹介いたします。

批評とメディアの実践のプロジェクト

このプロジェクトは、主としてウェブやソーシャルメディアを中心にデジタル化とグローバル化の時代の批評とメディアのあり方を考えると同時にその実践を行うことを目指します。

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校「アートライティングスクール」のnoteサイトです。受講生の記事を中心に公開します。プロジェクトディレクターは美術評論家の福住廉です。

RELATIONS
彫刻を巡る旅 ―韓国編―
黒田大スケ
2017年の5月のこと、その像は、韓国の仁川の小高い丘の上、花盛りの公園の奥で海の方を見て立っていた。口元にはトレードマークであるコーンパイプこそ無いが、異様に高い台座の上にあっても、その像がマッカーサーであることは一眼で分かった。なぜこんなところにマッカーサー像があるのだろうかと、歴史に疎い私は単なる興味でそこを訪れたのだったが、像を見てすぐに別のことに関心が移った。不思議なことに、初めて見るはずのその像を、なぜか私は既に知っていた。...

広報協力
「オルタナティブ! 小池一子展
アートとデザインのやわらかな運動」
日本で初めての"オルタナティブ・スペース"を創設した小池一子は、1960年代以降の日本のクリエイティブ領域の黎明期を、コピーライター、編集者、クリエイティブ・ディレクターとして牽引し、80年代よりアートの現場でもその活動を展開してきました。
本展は、小池の仕事を紹介しながら、領域を超えてクリエイターの表現を裏方の立場で下支えする土壌を開拓したその活動を総括するとともに、同時代の芸術家やクリエイターたちの軌跡にも迫る展覧会です。


東京ビエンナーレ賛助会員のお申込について
「一般社団法人東京ビエンナーレ」では、東京ビエンナーレの運営・実施を支える「賛助会員」を募集いたします。市民を主体に東京で立ち上がる、新たな動きにご賛同頂ける個人・法人の皆様のご参加を心からお待ちしております。様々な形で東京ビエンナーレを知りながら、応援いただければ幸いです。

TOKYO BIENNALE SNS
東京ビエンナーレに関する最新情報は、SNSをぜひご確認ください!


バックナンバーはこちら
https://tb2020.jp/news/tokyobiennale_journal/
このメールは、一般社団法人東京ビエンナーレ、東京ビエンナーレ事務局と名刺交換させていただいた方にお送りさせていただいております。
ニュースレターをご希望されない方は こちらからご連絡ください。
本メールアドレスは送信専用となりますので、返信いただきましてもご回答できかねます。ご了承ください。
一般社団法人東京ビエンナーレ