東京ビエンナーレジャーナル VOL.09
見なれぬ景色へ
2021.10.23
TOKYO BIENNALE 2020/2021


東京ビエンナーレは「見なれぬ景色」を描けたか

東京ビエンナーレ2020/2021は、9月5日に無事に終了しました。業務全体を推進してきたプロジェクト・プロデューサーとして、改めてご来場頂いた皆様、ご協力頂きました皆様に、深くお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
振り返ると会期の7月上旬から9月上旬は、コロナ禍が最も厳しく、不要不急の外出を控え、仕事はテレワークで、コロナ禁酒法時代とも言われているように、人と人との交流を促す飲食を共にする機会もなくなりました。法的制限はなくとも事実上のロックダウンの環境下で、私たちは自ら感染防止の厳しいガイドラインを設定し、対応できないイベントは中止や延期としながら開催しました。
 
会期中、コロナ禍が厳しさを増す中、東京ビエンナーレはこのまま継続して良いのか、と言う自問自答の中、緊急シンポジウムを開催し、多くの方々からの意見を頂きました。その議論を行った上で、休場日を設け、稼働日数を落としながらも、最後まで継続しました。
このような環境下でもご来場頂いたお客様、そして感染の危険が最も高い運営の最前線に立って頂いた運営マネージャー、スタッフ、並びにボランティアの皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。
 
こうしてまで何故、私たちが会期を全うすることにしたのか、疑問に感じている方もいらっしゃると思います。公式見解を出している訳ではありませんが、私が考える大きな理由は、東京ビエンナーレは、「芸術祭」と称していますが、本質的には祝祭的なイベントではなく、「私から私たちへ」を事業テーマとしている通り、例えコロナ禍においても、私たちが生きるために必要な、自己とコミュニティの再構築を目指す公共的な事業であると考えていることがあります。
 
アートは人の目を奪う力を持っていますが、そこだけに価値がある訳ではありません。社会の中で、直接は感知しづらい「関係性」に関わるという役割もあり得るのです。例えば、東京ビエンナーレには災害対応のプロジェクトがありますが、自然災害はコロナ禍でも関係なく訪れます。また、コロナ禍で地域における孤立の問題はより浮き彫りになりました。いつ何が起こるかわからない時だからこそ、生活と密接なまちとの関わりを考え直し、地域におけるつながりを取り戻すことが重要なのです。
しかし、ここでもう一度、自問自答をする必要があります。私たちは果たして、「見なれぬ景色」を描けたのであろうか、と。その答えは私たちはまだ持ち合わせていません。きっとまだまだと思います。まず今、私たちがすべきことは、会期中、どうしても延期せざるを得なかった、地域を跨いだ移動を伴うものや、身体的に密接になってしまうプロジェクトを全うする事です。
東京ビエンナーレのメイン会期は終了しましたが、このようなプロジェクトを開催する条件が、ようやく整ったと判断して、以下の通り、開催する運びとなりました。
 
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(1) 竹内昌義+中田理恵「TINY HOUSE FESTIVAL 2021」
   10月29日(金)~31日(日)
(2) 栗原良彰「Pure Life」
   10月30日(土)
(3) Kentaro!!a.k.a. Dayonashiik「語り継がれない伝説」
   10月31日(日)  
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是非、会場まで足をお運び下さい。皆様の参加をお待ちしています。
これらのプロジェクトを終えて、東京ビエンナーレ2020/2021のプログラムを終了します。正確に言えば、会場側の都合で展示できずにいるプロジェクト、海外作家が来日できず、制作出来なかったプロジェクトなどはまだ残っています。しかし、ここで一旦区切りをつけたいと思います。そして今回の私たちの「見なれぬ景色」に向けた活動の成果と課題を精査し、次回の東京ビエンナーレに向けて、様々な改善を講じ、2年後の2023年に開催することを目指します。
来年もプレイベントで様々なプロジェクトを仕掛けますので、ご期待下さい。
中西 忍
東京ビエンナーレ2020/2021 プロジェクト・プロデューサー

CURRENT & UPCOMING INFORMATION
東京ビエンナーレ2020/2021の会期を延期(10/29~10/31)した3つのイベントのお知らせです。

10/29(金)~10/31(日)参加者募集「TINY HOUSE FESTIVAL 2021」
TINY HOUSE(タイニーハウス)とは、「Tiny(小さな) house(家)」の意。「小さな家たちによるこれからの暮らしづくり」をテーマに、多様化する個々の「欲しい暮らし」の提案など多様な角度で提示します。現地でタイニーハウスの制作も予定しており、実際に小屋が立ち上がる様子もご覧いただけます。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://tb2020.jp/ongoing/tinyhousefestival2021/


10/30(土)参加者募集「ワークショップ|PURE LIFE
栗原良彰による、誰でも参加可能なワークショップ「Pure Life」を開催します。
参加者は、アーティストが制作した「等身大の卵」に絵付けをし、卵の殻を破り、でてくるパフォーマンスを一緒に作っていきます。「卵の殻の外の世界はどうなっているのか?」殻の外の世界に出ていく開放感を感じながら、新たな視点で世界を体験しましょう。
ワークショップ参加はもちろん、新東京ビルでパフォーマンスの鑑賞も可能です。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://tb2020.jp/ongoing/purelife-workshop/

10/31(日)参加者募集「ライブパフォーマンス|語り継がれない伝説
既存のスタイル化されたものから離れた視点で独自の表現を開拓するダンサー・KENTARO!! a.k.a. Dayonashiikが有楽町ビルの屋上にてライブパフォーマンスを展開します。普段は立ち入ることができない本会場は、JR日比谷駅や丸の内仲通りを一望することができます。都市に隠された非日常の空間を繋ぐパフォーマンスをお楽しみください。

詳細はウェブサイトをご覧ください。
photo by ただ(ゆかい)

RECOMEND INFORMATION
東京ビエンナーレが発信する情報をピックアップしてご紹介します。

東京ビエンナーレ2020/2021の公式noteです。

参加アーティストやディレクター、市民委員会の方々等のインタビューや対談、寄稿記事、また作品の進捗などをご紹介いたします。

批評とメディアの実践のプロジェクト

このプロジェクトは、主としてウェブやソーシャルメディアを中心にデジタル化とグローバル化の時代の批評とメディアのあり方を考えると同時にその実践を行うことを目指します。

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校「アートライティングスクール」のnoteサイトです。受講生の記事を中心に公開します。プロジェクトディレクターは美術評論家の福住廉です。



TOKYO BIENNALE note
TALK: 内藤 礼×谷口昌良×小池一子
東京ビエンナーレの参加作家3名に話を伺うTOKYO BIENNALE TALKシリーズ。第4弾は、参加作家の内藤礼、ギャラリー「空蓮房」の谷口昌良、そして小池一子の3名だ。内藤礼は、糸や布といった繊細な素材を用いたインスタレーションで、ものと空間、環境と鑑賞者を対話に誘うような作品を制作。谷口昌良は、僧侶、写真家という顔を持ち、東京・蔵前の長応院内に「空蓮房」という空間を設け、作家の展示活動をする。
「うつしあう創造」2020年、金沢 21世紀美術館、石川
《精霊》2020年 リボン、ポール 756.3 x 1238 x 1238 cm(サイズ可変)
photo by 畠山直哉


SDSノート_23
ソーシャルダイブ・ラボ企画発表会とこれまでを振り返って
こんにちは。 ソーシャルダイブ・スタディーズ(以下 SDS)、コーディネーターの工藤大貴です。今回は9/25に開催したSDS最終回についてのレポートと、これまでのnoteを振り返っていきます。
4か月に渡るソーシャルダイブ・スタディーズ。たくさんのゲストの皆様と、仕事や学校があるなか前向きに参加くださったメンバーの皆様のお力で修了することができました。ありがとうございました。
SDSノートも今回で最後になります。ぜひ、あと少しだけお付き合いください。

RELATIONS
機械の中の亡霊(CIA再考)
大坂紘一郎
1978年、当時アジアで最も高い超高層ビルとして「サンシャイン60」が竣工した。
落成当日から不穏な噂が囁かれた。人気のない通路、更衣室やトイレの一角をするりと駆け抜ける人の顔。冷気に襲われ、目に見えない突然の動きに押されて閉じ込められた逸話もある。訪問者は意味をなさない低い囁き声を聴き、新しいオフィスに通い始めたサラリーマンは奇妙な幻影や音に悩まされた。店のスタッフは呪われたようなうめき声や鉄門を閉める音や、絞首台の縄が締め付けられる音を聞き、夜に並べた陳列棚の商品が、朝出勤すると床に散乱していることも珍しい事ではなかった。...
カバー画像:The Sunshine 60 building, built in 1978, is a 60-story, mixed-use skyscraper located in Ikebukuro, Toshima, Tokyo. At the time of its construction, it was the tallest in Asia. Photo: Kakidai/CC BY-SA 3.0

アートライティングスクール
それぞれの肖像 「青海三丁目地先の肖像」2.5 architectsインタビュー
“この土地は、最終処分場として都市のゴミを一手に引き受けながら、オリンピックの会場となるはずの場所だった。一刻一刻姿を変えるこの場所で、どのような地霊(ゲニウス・ロキ)を見出すことができるだろうか。
地質学者によると、現代は奇跡的に海水面が安定している時代だという。沿岸部や埋立地に都市が発達したが、またいつ海水面が変化するかわからない。「青海三丁目地先」は、地球規模の視点から見れば刹那的な、しかし人間の視点から見れば多くの年月をかけて作り出した埋立地である。そこは都市の最前線であると同時に、最初に無くなる都市なのかもしれない。“(2.5 architects)

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「一般社団法人東京ビエンナーレ」では、東京ビエンナーレの運営・実施を支える「賛助会員」を募集いたします。市民を主体に東京で立ち上がる、新たな動きにご賛同頂ける個人・法人の皆様のご参加を心からお待ちしております。様々な形で東京ビエンナーレを知りながら、応援いただければ幸いです。

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東京ビエンナーレ2020/2021
見なれぬ景色へ ―純粋×切実×逸脱―

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