東京ビエンナーレジャーナル VOL.08
見なれぬ景色へ
2021.07.08
TOKYO BIENNALE 2020/2021


見なれぬ景色へ

東京ビエンナーレの呼びかけのキャッチフレーズを作ったのは2019年のこと。2020年の本番を直前に佐藤直樹アートディレクター、上條桂子エディターさんたちといくつもの言葉を書き出している中でフッと私の頭に湧いたのです。

アートが何をしようとしているのか?
この街の景色を見直す、変える、新しい視点を加える、次に向かう示唆を告げる。

いろいろありますが、そのような思いをこめて『見なれぬ景色へ』と決定したのでした。

ところが2020早春、新型コロナウイルスのワールドニュース第一報に私たちの目は凍りつきました。シャンゼリゼ大通り、ヴェニス・サンマルコ広場、どこも人っ子ひとりいない。こんな景色見たことない、感です。自然の変質、猛威。やられた、そして同時に私たちは予見した、世界の変化を!とも思いました。それは芸術文化創造にかかわる限り、あらゆる知見を動員して時代と社会の環境を洞察しなければならない立場の人間として当然のことでもあるのですが。

そして街を行く全員がマスク顔の見なれぬ景色から、私たちのつくる“見なれぬ景色へ”向かうモメントを得たようにも感じました。

2020/2021と年号をまたいで進展してきた東京ビエンナーレです。いよいよ実施の7月を迎えて、見なれぬ景色作りの現場のあちこちで熱気が増しています。もともと公的機関や協賛などの大きな資金源が用意されているわけでもない、経済的には厳しい取り組みですがアーティスト一人一人の努力がまた大変なもの。どんな作品をどこにということが定着するまでには建物や土地の所有者との交渉、関係先の役所の担当者との折衝などさまざまな局面で説得を続けなければなりません。

それでも、いわばコロナウイルスが居ようとオリンピックがどうなろうと、人間の表現の発露は止まるところを知らないと言える現在を迎えています。決まりきった美術館やギャラリー空間ではなく、“わが町”、“あなたの街”が表現の場だということが特徴の東京ビエンナーレなればこそのアートの面白さがここにあります。

例えば出品作家の一人で、車輪のついた鉢を街中に動かしてワークショップを重ねる美術家の村山修二郎さんは、植物の種を渡したひとが芽の出るのを見るとき、「気づかなかった景色」に出あうのだと言っていらっしゃいます。

皆さん、『見なれぬ景色へ』をあなたの言葉にしてください。そしてそれを自由に変えてくださっていいのです。アートは大らかで広い、楽しい世界なのですから。
小池一子
東京ビエンナーレ2020/2021総合ディレクター

画像:《移動式路地園芸術in京島向島吾妻橋浅草》2010、墨田区役所・東向島児童館、野外各所(東京)

CURRENT & UPCOMING INFORMATION

パスポート本券・個別鑑賞券発売中!

パスポート本券および作品ごとの個別鑑賞券の発売が始まりました!
一般2500円、学生1900円です。
取り扱いは、「チケットぴあ」または「ArtSticker」にて(いずれも価格や条件は同じです)。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://tb2020.jp/ticket/

参加者募集「LIVE RELATIONS! vol.01」

東京ビエンナーレの企画のひとつ『RELATIONS:批評とメディアの実践のプロジェクト』がビエンナーレの会期中、都市空間に飛び出します。LIVE RELATIONS vol.01では、二日間に渡ってアーツ千代田3331で東京ビエンナーレの参加アーティストや市民、スタッフ、そしてそれを取り巻くさまざまな人々の間を取り持ち、議論の場を提供したいと思います。

詳細はこちら。

TONARI BAR トナリバー 隣場|ボランティアファシリテーター募集

トナリ主催のプロジェクト「トナリバー」にボランティアファシリテーターとして関わってみませんか?

「トナリバー」は、アートセラピーやソーシャルワークからアプローチするアートプロジェクトです。

詳細は公式サイトから。

お子さんやご家族でも参加ok!【服×アート】プロジェクト参加者募集!西尾美也「着がえる家」

舞台となる海老原商店は、1928年築の元洋服店。古着、既製服、反物と扱う品を変えながら、日本の洋装化の歴史とともに歩んできました。

アートプロジェクト「着がえる家」では、西尾がこの海老原商店の「新しい店主」として文字通り住み込み、数々のプロジェクトを展開します。

3つのワークショップも定期開催!
■「いただ着ます」
■「感覚の洗濯」
■「ちびっこテーラー」
いずれも、お子さんやご家族でも参加できるもの。
https://tb2020.jp/ongoing/kigaeru-house_workshop/

7月25日(日)開催ツアー「そうだ鶯谷、歩こう。名所と萩の湯を巡る街探索」

銭湯のある街、をテーマに活動するBKY+銭湯山車巡行部との共同ツアー。

これまで鶯谷を訪れたことのない方のために、この街を語る上では外せないスポットと、普段は覗くことのできないスポットを巡りながら鶯谷の街を自分なりの楽しみ方を見つけてみてください。
https://tb2020.jp/ongoing/uguisudani-belle-epoque-project-_tours/

8月20日(日)開催イベント:東京影絵クラブ公演「ポリフォニック・シャドウ・シアター」

「東京影絵」は、インドネシアで影絵芝居ワヤン・クリットを習得した川村亘平斎とキュレーターの宮本武典が、コロナ禍の東京に生きる外国籍の人々のオーラルヒストリーを影絵化し、多文化共生につなげていくプロジェクトです。

本公演では、大手町・丸の内・有楽町地区を舞台にSDGs達成に向けた活動を推進する「大丸有SDGs ACT5」と連携し、ダイバーシティ&インクルージョンの視点から、東京の「あたらしい芸能」として影絵とガムランを上演。異なる文化を持つ私たちが、人種も言語も宗教もこえて、身も心もオープンに「つながり、交わる」、影と音楽の空間をつくりあげます。

【令和三年度 銭湯山車巡行】銭湯山車巡行

銭湯で使われていた物品を再構成した「山車」で東京の街を「巡行」します。

巡行は三日に分けて実施し、各回の様子はオンラインでご視聴いただけます。

第一日:2021年7月18日(日) 
第二日:2021年8月9日(月・祝)
第三日:2021年8月28日(土) 
※別途予備日あり

7月24日(土)開催!トークイベント「アート×出産:子ども産んだらなんか変わった?」

東京ビエンナーレ出展作品《「抱っこ紐に次男、ベビーカーに長男」では無理ゲーなダンジョンの攻略方法》の企画者である藤原と共に、出産後もクリエイティブに活動を継続する3名をゲストに迎え、乳幼児育児当事者として「物理的・心理的・社会的な変化」や「制作活動の継続」等についてクロストークを行います。

更に、アートセラピー研究者の有賀三夏を迎え、心理学の視点から登壇者の活動を分析。実体験に基づいた、乳幼児育児当事者の視点で参加者も交え「アート×出産」について語り合います。

RECOMEND INFORMATION
東京ビエンナーレが発信する情報をピックアップしてご紹介します。

東京ビエンナーレ2020/2021の公式noteです。

参加アーティストやディレクター、市民委員会の方々等のインタビューや対談、寄稿記事、また作品の進捗などをご紹介いたします。

批評とメディアの実践のプロジェクト

東京ビエンナーレのプロジェクトの一つとして「リレーションズ:批評とメディアの実践のプロジェクト」を立ち上げます。このプロジェクトは、主としてウェブやソーシャルメディアを中心にデジタル化とグローバル化の時代の批評とメディアのあり方を考えると同時にその実践を行うことを目指します。

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校

アートにまつわる言葉を編み、文字を綴ることを専門的に学ぶ学校「アートライティングスクール」のnoteサイトです。受講生の記事を中心に公開します。本校は「東京ビエンナーレ2020/2021」のソーシャルプロジェクトのひとつで、プロジェクトディレクターは美術評論家の福住廉です。


TOKYO BIENNALE note
COLUMN:東京オリンピックのオルタナティブとしての東京ビエンナーレ/吉見俊哉(社会学者)
私は普段、社会学者として大学で教えていますが、市民委員会の委員として東京ビエンナーレにも関わっています。総合ディレクターの中村政人さんとは東京都心北部のまちづくりを目指す「東京文化資源会議」( https://tcha.jp/)で長年ご一緒しています。東京の未来、日本の都市の文化的未来について議論を重ねており、目指すところを共有している同志だと感じています。また、東京ビエンナーレが展開されるエリアと東京文化資源会議の対象とするエリアは非常に重なる。それについては後ほどご紹介したいと思います。

TOKYO BIENNALE note
INTERVIEW:長谷川逸子「音のきづき」
日本がバブルだった1990年にイタリア半島を横断する旅行をした。その頃日本人の集団旅行者をたくさん見た。確かバチカンの教会だった。入り口のドアの横に日本人の団体入館お断りの紙が貼られていてびっくりしたことを思い出す。集団の会話は声が高く大きくなる。そのことをたくさんのアジアの人々が日本に旅行に来ている頃、ホテルのロビーなどで耳を塞いだことを思い出す。…

SDSノート_04
「街をリサーチする目線」
こんにちは。 ソーシャルダイブ・スタディーズ(以下 SDS)、コーディネーターの工藤大貴です。
第4回レクチャーとなる6月19日(土)は、デザイナーの原田祐馬さん (UMA/design farm)をゲストに迎え、ワークを交えながら街やそこに暮らす人への視座についてお話しいただきました。
UMAの優れたデザインワークの下に潜む、徹底的なリサーチやインタビュー、フィールドワークの実践はSDSメンバーも圧倒されるほどでした。

RELATIONS
特集巻頭インタビュー「アートそのものがアクティヴィズムであり、社会を変えていく」(聞き手:清水知子)
北原恵
社会を変えていく」(聞き手:清水知子) [JA]
1994年にゲリラ・ガールズの紹介によって幕開けした連載「アート・アクティヴィズム」は、まもなく四半世紀を迎えようとしている。その研究の礎となった出来事とは何か。そしてその活動はいかに欧米からアジアへと転じることになったのか。北原恵さんのこれまでの活動、研究の軌跡とそこから浮かび上がるアート・アクティヴィズムの可能性を探る。
カバー画像:チョン・ジョンヨプ《最初の晩餐》部分 2019年 oil, acrylic on canvas 50×100cm 北原恵撮影

アートライティングスクール
「描く日々」に出会う
荒生真美
「WIRED」「ART IT」、表紙だけで手に取りたくなる先鋭のデザインや情報が詰まった雑誌。自由に羽ばたくような編集を担っていた佐藤直樹は、現在、ひたすらじっくりと描くことに向き合う日々を過ごしている。…
画像:《秘境の東京、そこで生えている》 2017、アーツ千代田 3331(東京)

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「一般社団法人東京ビエンナーレ」では、東京ビエンナーレの運営・実施を支える「賛助会員」を募集いたします。市民を主体に東京で立ち上がる、新たな動きにご賛同頂ける個人・法人の皆様のご参加を心からお待ちしております。様々な形で東京ビエンナーレを知りながら、応援いただければ幸いです。

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東京ビエンナーレ2020/2021
見なれぬ景色へ ―純粋×切実×逸脱―

開催期間:2021年7月~9月
※会期は変更になる場合があります。

一般社団法人東京ビエンナーレ