東京ビエンナーレジャーナル VOL.16
東京ビエンナーレ2023
「リンケージ  つながりをつくる」
TOKYO BIENNALE 2023|Create Linkage
2023.9.8

アートの刺激で社会を動かす

人間社会は日々の生活で忙しく、クリエイティブに楽しさと生産性を上げるためには、やはり外からの新しい刺激が起爆剤として必要です。その刺激を提供するのはアートの役割だと私は考えています。東京ビエンナーレはそのような刺激を地域の社会に与えようとしています。

私は2022年に東京ビエンナーレチームに加わり、国際渉外活動を担当しています。バックグラウンドはアートではなく、30年にわたって金融市場の立場から日本の経済と社会の変化を見て来ました。経済活動では、まだつながっていない人と発想をつなげることによって新しい付加価値を生み出すイノベーションのプロセスが基本ですが、社会のイノベーションの面でも、いわゆるもっと楽しくもっと意味のある生活をするためにも、新しい刺激を受けて、まだつながっていない人とつながっていく事が大切です。それが私の東京ビエンナーレへの興味の原点です。

では、国際渉外活動というのは具体的にどのような事なのか、一例を説明しながら東京ビエンナーレの私にとって大事な特徴を紹介したいと思います。

今年のプログラムでは数多くの海外アーティストが活動する計画となっています。ドイツ、オーストラリア、ブラジル、ニュージーランド、イタリア、トルコ、タイ、シンガポール、アイスランド、カナダ、オランダ、ベルギーなどのアーティストが来日する予定で、各国の大使館と文化団体にその活動を説明したり、支援を申し込んだりすることが国際渉外活動のひとつの大きな役割です。その際に東京ビエンナーレの特徴は何か、他の数多くの東京でのアート活動とどこが違うかを説明するのはこの芸術祭の知名度と各方面からの理解を高めるために必要です。

アートによって社会に刺激を与えるとなると、やはりそのような刺激を既に積極的に求めている人々以外の社会にもそれを届けるのがインパクトを最大化するために効果的でしょう。そうなると、一箇所の美術館での展示ではなく、町の地場までその刺激を届けていく事によって幅広い社会の層とつながる事ができると私たちは確信しています。その意味で今年の東京ビエンナーレのテーマは「リンケージ つながりをつくる」に決まりました。

東京ビエンナーレが他と違う一つの特徴は、海外アーティストが自分の作品を東京でただ展示するのではなく、本人たちが来日して、展示場所とそこに生活している社会をイメージしながら現地で作品を作って行くことにあります。観客としてすでに有名なアーティストの作品を見に行く「アート消費の積極派」だけではなく、「東京の地場の人々」を巻き込んでいくためには、海外のアーティストがその街にきて、そこで感じたことを作品に打ち込んで行くプロセスがもっと広い意味でその社会に刺激を与えるために必要だと思います。それが私にとって東京ビエンナーレの最大の特徴であり、皆様にも楽しんでもらいたい魅力だと思います。

このことは各国の大使館にも高く評価されていると感じています。それぞれの国のイメージに沿った伝統的な文化活動ではなく、アート表現の最前線で活躍している芸術家を日本で紹介する活動は各大使館の文化担当者の活動計画と上手く合致していて、様々なサポートを受けられることになりました。

異文化に接して、それによって自分のことをもっと理解できる重要性は私が常に感じていたことです。来日したころ住んでいた渋谷区上原一丁目には「他人」という小さな中華料理屋さんがありました。駅からの帰り道に週何回もそこでご飯を食べて、ある日その店主に店の面白い名前のことを聞きました。それは「他人の飯を食わないと一人前になれない」との意味で、「他人」の飯を食べる場所を提供したかったという意味深い答えでした。
東京ビエンナーレ2023でも、同じ意味で色んな「他人」のアイディアと刺激を吸収し、楽しいつながりを新しく作れたら嬉しいと思います。

東京ビエンナーレ2023国際渉外担当 ダニエル・バブレク

ウィーンのカフェは昔から社会とつながる場でした

TOKYO BIENNALE NEWS

9月8日(金)正午より|東京ビエンナーレ2023【秋会期】チケット発売開始!
東京ビエンナーレ2023の多くのプログラムは無料でご体験いただけますが、一部の会場およびプログラムは、開催場所や内容等の関係から有料です。お得な入場券&割引クーポン付きガイドブックがおすすめです。
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「リレーションズ:批評とメディアの実践のプロジェクト」再始動!
第II期のリレーションズでは、テキスト論稿のほか、対話や座談会などの音声メディア(+テキスト起こし)で批評の新しいあり方にアプローチ。その皮切りとなる「リレーションズ・トーク」第1回は、毛利ディレクターと美術作家の白川昌生との対話をお送りします。
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[締切延長]IMM東京 公募展|国内に住む海外ルーツをもつ人の作品・表現を募集中
東京ビエンナーレ2023のリンケージのひとつ「IMM東京 公募展『It's not a cultural showcase, but a window to the soul』」では、日本国内在住で海外にルーツをもつ方が、これまで大切にしてきた文化や習慣、表現を東京のまちなかで一緒に展示します。
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SLOW ART COLLECTIVE TOKYOが大手町に帰ってきました!
昨年好評を博し、参加者のみなさまに編み込んでいただいた部分をアーカイブ的に再設置しつつ、5(火)に来日したSlow Art Collectiveのチャコさんとディランと共に新たに制作していきます。ボランティア・活動メンバー共に募集中です。
 > 詳細は こちら から

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